給与や賞与、福利厚生に関する制度は、労働者が現在勤務している企業、またはこれから就職を検討している企業において非常に関心の高い項目であるのみならず、企業側にとっても優秀な人材を確保・定着させるための重要な制度設計要素となっています。業種ごとの実際の給与・賞与および福利厚生のパッケージに興味のある方は、本稿をぜひご参照ください。
給与・賞与および福利厚生とは?
給与・賞与とは?
「給与・賞与」という言葉は一体的に使われますが、それぞれ異なる意味を持ちます。求人に応募する際、多くの方がまず注目するのは「給与額」です。
ベトナム労働法2019年第90条において、「賃金」とは、雇用者が労働者に対して業務の遂行に対して支払う金銭を指し、業務内容や職位に応じて設定されます。ただし、その額は政令第74/2024/NĐ-CPに基づく地域別最低賃金を下回ってはなりません。
「賞与」とは、労働者の業績向上や努力を促す目的で、企業の経営状況または雇用契約等に基づいて支払われる追加報酬です。賞与は給与とは別に支払われることもあり、給与に付随する形で支給される場合もあります。
福利厚生とは?
賃金に加えて、労働者が重視するもう一つの要素が福利厚生です。これは企業の業績および制度設計に基づいて任意に提供されるものであり、法律上必須ではないものの、労働者の生活・健康・精神面の安定と将来的成長を支援する上で極めて重要です。
福利厚生制度が充実している企業は、優秀な人材の採用・定着において大きな優位性を持ちます。
法定の給与・賞与および福利厚生
ベトナムを含む多くの国では、労働者は労働法および関連する政令・通達等に基づいて、法定の最低賃金や一定の福利厚生を享受する権利があります。
政令第74/2024/NĐ-CP(2024年7月1日施行)に基づき、労働者には地域別最低賃金(月額3,450,000 VND ~ 4,960,000 VND)が保障されています(地域区分は4段階)。
また、残業労働に対しては以下の割増賃金の支払いが義務付けられています:
- 平日の残業:通常時給の150%以上
- 週休日の残業:通常時給の200%以上
- 祝日・有給休暇日の労働:通常時給の300%以上
さらに、企業は労働者に対して法定の社会保険への加入義務があり、これは最も基本的かつ優先的な福利厚生制度と位置づけられます。
社会保険でカバーされる5つの給付制度:
- 疾病手当
- 出産手当
- 医療保険給付
- 労災および職業病給付
- 死亡給付および退職年金
強制社会保険に加入することで、労働者は診療・治療時の健康保険や、必要時に失業保険等の権利も受けることができます。
人材定着のための福利厚生制度の例
企業ごとに異なるポリシーの下、労働者には賞与や福利厚生が支給されます。以下のような制度は、従業員の満足度や生産性向上に寄与するものとして推奨されます:
生命保険の加入補助
従業員の健康を考慮した生命保険への加入支援は、企業の信頼度向上に寄与します。現在では、バオベト保険、プルデンシャル生命保険、バオミン保険などの保険会社が法人向けプランを提供しています。
職能向上のための研修・教育支援
労働者の成長および知識向上に重点を置き、企業は通常、研修後に会社への貢献を促すために一定の条件を設けつつ、研修費用の支援を行います。
リゾート旅行・チームビルディング活動
組織の結束を高めるために欠かせない活動であり、労働者が働きながらリフレッシュすることでチームの一体感が醸成されます。強いチームは持続可能な企業の基盤となるため、このような福利厚生にかかる費用についても、企業は常に重視しています。
KPI(業績指標)に基づく成果報酬
労働者に対してKPI(重要業績評価指標)を設定し、それに基づいて業務を遂行・達成することは、労働者と使用者双方のニーズのバランスを取る手段となります。企業は利益を得て事業の成長を実現し、労働者は自身の努力に見合った成果を享受することで、満足度とモチベーションの向上が期待されます。
特別な日の贈り物(祝日・誕生日・旧正月など)
これは、企業が各個人に対して関心と配慮を示す機会であり、従業員との結びつきを深め、喜びを分かち合うことで一体感と充実感を醸成します。
各種手当の支給
昼食手当、通勤交通費、電話手当、制服手当など、企業は給与・賞与および福利厚生に関する各種手当を毎月支給することがあります。
給与・賞与および福利厚生の意義
労働者にとって:企業が適切な給与・賞与制度を整備することにより、労働者は安心して長期的に勤務し、意欲的に業務に取り組むことで、生産性の向上が期待されます。
企業にとって:優秀な人材の確保および定着を通じて、企業のブランド価値を高め、事業の安定的な成長と発展を実現する上で有効です。
総じて、企業は給与・賞与および福利厚生制度の構築において明確かつ継続的な取り組みを行う必要があります。これにより、人材資源の安定と均衡を図り、事業運営の効率化と成果向上につながります。