給与仕訳は、労働者の権利を確保し、優秀な人材を長期的に確保するために不可欠な、透明性と効率性を求められる業務です。しかしながら、すべての企業が給与仕訳のプロセスを正しく理解し、適切に給与計算および仕訳を行っているわけではありません。
企業が透明性のある給与仕訳体制を構築し、万一の誤りにも迅速に対応できるようにするために、以下ではKMCの専門家が給与仕訳プロセスの詳細と、各ケースに応じた総合的な解決策をご紹介いたします。
給与仕訳プロセスの法的基盤
企業が把握すべき給与仕訳に関連する法的文書は以下のとおりです。
- 労働法2019年およびその施行関連文書
- 社会保険法2014年、雇用法
- 税務管理法および個人所得税(PIT)に関する通達
- 通達200/2014/TT-BTCまたは通達133/2016/TT-BTC:各企業形態に適用される会計制度に関する指針。適切な会計制度を特定することは、勘定科目体系および仕訳方法を選定する第一歩です。
- 通達96/2015/TT-BTC(改正・補足):法人所得税計算において損金算入できる費用・できない費用の判定に関する指針。給与費用に関する具体的な規定が含まれており、給与費用が適正な損金として認められることは企業にとって極めて重要です。
上記の規定を遵守することにより、給与計算および仕訳プロセス全体の合法性が担保され、給与計算、税務申告、労働監査の過程において不要なリスクを回避することができます。
給与仕訳に適用される主要な会計勘定科目
勘定科目 334 – 従業員に対する未払金
- 借方:従業員へ既に支払済または前払した金額、給与から控除した金額
- 貸方:従業員に支払うべき給与・賃金
- 貸方残高:従業員にまだ支払っていない金額を反映
勘定科目 338 – その他の未払金・未納金
- TK 3382 – 工会経費(組合費):控除および納付済の工会経費を反映
- TK 3383 – 社会保険(BHXH)
- TK 3384 – 医療保険(BHYT)
- TK 3386 – 失業保険(BHTN)
- 借方(TK 3383, 3384, 3386):主管機関へ納付した保険料
- 貸方(TK 3383, 3384, 3386):費用に算入した保険料
費用集計に使用する勘定科目
- TK 622(直接労務費)
- TK 627(製造間接費)
- TK 641(販売費)
- TK 642(一般管理費)
最新規定に基づく給与仕訳プロセス
給与を透明かつ正確に仕訳するために、企業は以下の手順を実施します。
ステップ1:入力データの収集
勤怠表、給与支払表、昇給決定書、手当、賞与などを集計。
ステップ2:総給与額の算定
基本給、諸手当、補助金、賞与などを計算。
ステップ3:控除額の算定
- 個人所得税(PIT)の控除(該当する場合)
- 未清算の前払金の控除
- 従業員負担分の保険料控除(BHXH 8%、BHYT 1.5%、BHTN 1%)
ステップ4:給与に基づく企業負担分の算定
- 社会保険(BHXH 17.5%)
- 医療保険(BHYT 3%)
- 失業保険(BHTN 1%)
- 工会経費(KPCĐ 2%)
上記を企業費用として算入。
ステップ5:仕訳
- 給与費用の計上:
借方 TK 622, 627, 641, 642
貸方 TK 334 - 費用算入された控除額の計上:
借方 TK 622, 627, 641, 642
貸方 TK 3383, 3384, 3386, 3382 - 給与からの控除額の計上:
借方 TK 334
貸方 TK 3383, 3384, 3386(従業員負担分)
貸方 TK 3335(個人所得税) - 給与支払時:
借方 TK 334
貸方 TK 111, 112 - 保険料・工会費納付時:
借方 TK 3382, 3383, 3384, 3386
貸方 TK 111, 112
誤謬処理および修正仕訳のガイドライン
本節は、給与仕訳プロセスにおいて会計担当者が常に抱える懸念を解決する重要な内容です。
事例1:給与計算誤りによる調整(前月に不足計算)
- 原因:前月、従業員Aに対して給与を5,000,000 VND不足計算した。
- 処理方法:
- 誤謬確認書および修正決定書を作成。
- 当期に給与費用を追加計上(例:管理部門の場合):
借方 TK 642:5,000,000
貸方 TK 334:5,000,000
- 併せて、この調整額に係る社会保険・医療保険・失業保険・工会経費を追加計上。
- 従業員へ支払う際は通常どおり仕訳処理を行います。
事例2:社会保険料の過納による調整
- 原因:会計担当者が社会保険料を10,000,000 VND過納した。
- 処理方法:
- 社会保険機関に対し、過納額および処理方法(返金または翌期分との相殺)について確認文書を提出。
- 社会保険機関から現金で返金された場合:
借方 TK 111:10,000,000
貸方 TK 3383:10,000,000 - 翌期分と相殺される場合:会計上は帳簿外で管理し、翌期の納付額を減額処理する。
例:翌期の納付額が50,000,000の場合、実際の納付額は50,000,000 – 10,000,000 = 40,000,000となる。
仕訳:
借方 TK 3383:40,000,000
貸方 TK 111:40,000,000
事例3:工会経費の控除漏れによる調整
- 原因:前月、給与総額に対する工会経費2%(20,000,000 VND)の控除を失念した。
- 処理方法:
- 当期に工会経費の費用および未払額を追加計上:
借方 TK 642(またはTK 622, 641など部門に応じて):20,000,000
貸方 TK 3382:20,000,000 - 工会経費を納付する際の仕訳:
借方 TK 3382:20,000,000
貸方 TK 111, 112:20,000,000
- 当期に工会経費の費用および未払額を追加計上:
給与会計に関するよくある質問への回答
Q1. TT200 を適用する企業と TT133 を適用する企業では、給与会計にどのような違いがありますか。
主な違いは、費用を集計する際に使用される補助勘定(第2階層、第3階層など)の体系にあります。企業は、自社が採用している会計制度に基づいて、適切な勘定科目を選択する必要があります。例えば、費用を勘定622、627、641、642に配分する方法は同じですが、これらの勘定を詳細に区分する場合には、制度ごとに規定が異なる場合があります。
Q2. 法人税の課税所得計算上、給与費用を損金算入可能な適正費用として認められるためには、どのような条件を満たす必要がありますか。
給与費用が損金算入可能となるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 法令に基づく労働契約書があること
- 出勤簿、給与明細などの書類が揃っていること
- 給与は、法定要件を満たす水準である場合には従業員の銀行口座に振り込まれること、または正規の支出証憑に基づき現金で支払われていること
※詳細については「適正費用として認められる条件」に関する記事をご参照ください。
Q3. 個人所得税の申告書について、いつ修正申告が必要ですか。
申告漏れにより納税額が不足している場合、または過大に納税している場合には、企業は個人所得税の修正申告を行う必要があります。通常は、誤りが生じた月または四半期の申告について修正申告書を提出するか、税務管理法の規定に基づき要件を満たす場合には、誤りを発見した月または四半期の申告書に直接修正を行います。
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