完璧な給与・賞与規程を、競争力のある給与体系や魅力的な賞与制度とともに数か月かけて作り上げましたか?しかし、発行日にはなぜか社員からの問い合わせメールが殺到し、不満の声や緊張した会議が相次いだのでしょうか?問題は内容そのものではなく、導入方法にある場合や、両方の課題に直面している可能性もあります。本記事では、ベトナムの多くのFDI企業へのコンサルティング経験に基づき、給与・賞与規程の構築から成功的な導入までの包括的なロードマップをAからZまでご紹介します。

なぜFDI企業は体系的な給与・賞与規程を構築する必要があるのか?

法令遵守の「二重課題」に対応するため

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FDI企業は、ベトナム労働法と本社からの国際的な基準という二つの法体系に直面しています。体系的な給与・賞与規程は、FDI企業に以下のメリットをもたらします:

  • 国内法上のリスクを回避し、最低賃金、社会保険加入、残業、テト(旧正月)賞与などの規定をすべて法令に則って実施することを保証。
  • 米国のFCPAや英国のUK Bribery Actのような、汚職防止や財務透明性に関する厳格な国際規定を、上級管理職向けの賞与制度にも適用し、遵守を確保。

「競争の嵐」の中で人材を確保するため

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ベトナム市場で人材競争が激しい中、明確で公正な給与・賞与規程を整備することで、従業員は昇給や賞与を得るためのキャリアパスや評価メカニズムを理解できます。結果として、従業員は企業に長く留まるようになります。

多文化環境における公正な文化を醸成するため

ベトナム人従業員と外国人専門家の間には、明示されなくても一定の隔たりがあります。体系的な給与・賞与規程は、この隔たりを埋める手助けとなります。すべての従業員は、職位、能力、業績に基づく統一された評価基準で評価・報酬されます。すべてが公開されることで、企業が特定の誰かに特権を与えているのではないかという疑念は解消され、団結力と結束力のある職場環境が築かれます。

FDI企業における給与・賞与規程構築の原則

原則1:法的に正しいルールと柔軟な運用

給与・賞与規程を構築する際は、2019年ベトナム労働法に基づき、地域ごとの最低賃金、社会保険の加入、残業規定を絶対に遵守する必要があります。加えて、FDI企業は親会社が要求する国際基準も考慮する必要があります。これにより、両面からの不要な法的リスクを回避できます。

標準的な枠組みは必要ですが、すべての支社や部門に機械的に適用してはいけません。その代わり、各対象グループの特性に応じた柔軟な規程が求められます。たとえば、R&D部門の賞与は創造性に連動させ、営業部門は売上に連動させる、といった具合です。

原則2:ルールは公開、個人情報は保護

従業員は「なぜ自分はこの給与・賞与なのか」を知る必要があります。そのため、基本原則を公開しましょう。たとえば、給与表がどの要素(例:3P方式—Position、Person、Performance)に基づいて構築されているか、KPI賞与の計算方法、適用される手当の種類などです。規程を明確なルールとして公開することで、誰もが理解し努力できるようになります。

しかし、個々の具体的な給与水準は秘密にする必要があります。これによりプライバシーが尊重され、不要な比較や嫉妬による社内の不和を避けられます。

原則3:戦略と企業文化との密接な連携

優れた給与・賞与規程は、企業の経営戦略と目指す企業文化に沿って構築されるべきです。

たとえば、技術系FDIスタートアップ企業では、優秀な人材を引き付け、維持するために株式報酬(ESOP)の制度を導入することがあります。一方、日本の製造企業では、安定性と勤続年数を重視し、基本給と業績連動賞与のバランスを取った給与構造となります。

企業文化において、協力を促進したい場合は、個人の業績だけでなくチームに対する賞与も設定します。革新を重視する場合は、失敗しても斬新なアイデアには相応の報酬を与える政策を設けます。

給与・賞与規程構築のステップ

ステップ1:情報の収集と分析

社内分析

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まず自問してください。「自社はどのような行動や成果を促進したいのか?」そこから、経営戦略、企業文化、財務状況、現行組織構造を見直します。

市場調査

MercerやTowers Watsonなど信頼できる調査から給与・賞与データを収集し、ベトナム国内同業のFDI企業と比較します。これにより、人材を引き付け、保持するための競争力ある給与水準を設定できます。

法的調査

規程を構築する前に、ベトナム労働法および給与、賞与、残業に関連するガイドラインを十分に把握しておく必要があります。

ステップ2:職務分析と給与表の構築

各職務について、責任範囲、必要スキル、複雑さ、影響度などの要素を体系的に評価します。多国籍企業で一般的に用いられる手法は、ポイント・ファクター法や3Pモデルです。

職務評価結果と市場データに基づき、「グレード」と「ランク」を設定します。各グレードは同等価値の職務グループに対応し、その中のランクは従業員が能力や勤続年数に応じて昇給できるルートを提供します。

ステップ3:柔軟な給与・賞与制度の設計

設計前に、報酬構造を理解する必要があります。固定給(基本給)、手当(役職手当、通勤手当、昼食手当など)、変動報酬(モチベーションを高める「スパイス」)の3つの要素です。

賞与制度は目標に連動させる必要があります。個人・部門KPI賞与、プロジェクト賞与、イノベーション賞与などを設計し、計算方法は明確かつ測定可能、公正であるべきです。たとえば営業社員の賞与は売上や契約成立率に基づいて算定します。

ステップ4:文書の作成と完成

上記の内容をまとめ、公式文書として明確で理解しやすく作成します。標準的な構成は、適用範囲、対象者、原則、給与構成、賞与政策、施行条項などの章・条項を含みます。

注意:文書作成時には、用語を簡潔にし、専門用語を明確に説明してください。多文化環境では言語障壁があるため、特に重要です。

ステップ5:意見収集と承認

多くの合意を得ることで規程は承認されやすくなります。そのため、ドラフトを経営陣、管理職、場合によっては労働組合代表に提示し、意見を収集します。

注意:経営陣の承認時には、必要性と効果を示すために、数値データ、市場データ、影響分析を添付してください。

ステップ6:周知と実施

承認後、すぐに発行せず、まず周知計画を立てます。誰に、いつ、どの方法で、どの内容を伝えるかを考えます。

また、管理職向けに事前研修を行い、規程内容を理解させ、従業員への説明や指導ができるように準備します。必要に応じて、いくつかの部門で試験導入し、反応を評価して調整します。反応が良ければ、全社展開します。

給与・賞与規程の構築は内容だけでなく導入方法も重要です。導入時のミスでせっかくの政策が無駄にならないように注意してください。経験が少ない場合は、KMCの専門家にサポートを依頼してください。KMCの給与サービスは、資料提供だけでなく、周知、社内研修、導入後の効果評価まで一貫して支援します。