外国資本を有する有限責任会社(LLC)の設立に関する情報を探していて、膨大な法的規定に圧倒されていませんか?
それはごく自然なことであり、国内法と国際的な規制の間には少なからず違いがあるためです。KMCは、これまでに多数のFDI投資家による有限責任会社設立を成功に導いた実績があります。その経験に基づき、本記事にて詳細かつ分かりやすくステップごとに解説いたします。
有限責任会社(LLC)の分類:あなたの企業はどのタイプか?
有限責任会社には、以下の2つの主要なタイプがあります。
一人有限責任会社
本形態は、一の組織又は一個人のみが出資者(所有者)となり得るため、独立した投資家にとって簡便な選択肢となります。所有者は、会社のすべての債務及び財産上の義務について責任を負いますが、その責任は登録済みのチャーターキャピタルの範囲内に限定されます。
所有者が単独で管理を行うため、意思決定が迅速であり、複雑な会議手続を要しない点も特徴です。したがって、ベトナムにおいて出資比率100%での事業展開を希望する外国投資家にとって理想的な形態といえます。
この種類の一社員有限責任会社(One-Member LLC)の組織構造は簡素であり、所有者、会社会長、社長/総社長で構成されます。
チャーターキャピタルに関しては、所有者が自己資金により追加出資することが可能です。他者からの資金調達を希望する場合には、二名以上のメンバーを有する有限責任会社又は株式会社への組織変更が必要となります。
さらに、一社員有限責任会社は、設立後2年以上経過し、負債及び財産上の義務を完全に履行できることを確保した場合に限り、資本金の減額が認められます。また、登録日から90日以内にチャーターキャピタルが全額払込されない場合にも減額手続の対象となります。
二名以上有限責任会社
本形態は、2名以上50名以下の構成員(個人または法人)が出資を行う会社です。各構成員は、出資を約束した範囲内で責任を負うため、協業において柔軟性があります。
さらに、複数の構成員による出資は、財務リスクの分散や資金調達の容易化に寄与します。そのため、ベトナム国内のパートナーや他の投資家と協力して大規模プロジェクトを展開することを希望する外国投資家にとって理想的な形態です。
一方で、二名以上有限責任会社の組織構造は複雑です。会社には、社員総会、社員総会会長、及び社長の設置が必要です。また、構成員が11名を超える場合には、透明性を確保するために監査委員会の設置が義務付けられます。
単一所有者有限責任会社と比較すると、既存構成員の出資増加、出資権の譲渡、新規構成員の受け入れが容易である点が特徴です。資本金の減額については、二形態ともに同一の条件を満たす必要があります。
設立条件および準備書類
条件
ベトナムにおける有限責任会社の設立には、以下の基本条件を満たす必要があります。
会社名
会社名には、**「有限責任会社(Công ty TNHH)」または「Công ty Trách nhiệm hữu hạn」**の文字を含め、固有名を付す必要があります。例:Công ty TNHH Fuji Việt Nam。
会社名は、既に登録されている他の企業と重複または混同を招くものであってはなりません。そのため、会社名の妥当性を確認するために、国家企業登録情報ポータルで事前検索を行うことが推奨されます。
※注意:会社名に「一社員」や「MTV」を付ける必要はありません。これは将来的に会社形態を変更する場合の柔軟性を確保するためです。
本店所在地
本店所在地は具体的な住所を記載する必要があります。例:123 Nguyễn Văn Cừ, Phường 5, Quận 5, TP. Hồ Chí Minh。
2014年住宅法の規定により、居住用マンションや集合住宅を本店所在地として使用することはできません。
本店所在地は、会社のオフィス所在地、看板掲示、および取引活動の実施場所となります。
チャーターキャピタル
チャーターキャピタルは、会社運営のために出資者が約束した資本金です。
登録時に資本金を証明する必要はありませんが、チャーターキャピタルは事業税(税務署における「営業税」)額に影響します。資本金が10億ドンを超える場合は、年額3百万ドンの営業税、10億ドン以下の場合は年額2百万ドンの営業税が課されます。
※設立初年度は営業税が免除されます(政令22/2020/NĐ-CP)。したがって、事業規模および財務能力に応じて適切な資本金額を選択してください。
事業内容
法令で禁止されていない範囲で自由に事業内容を登録できます。ただし、教育、医療、不動産などの許認可が必要な業種については、法定資本金や専門資格の要件を満たす必要があります。
また、外国投資企業(FDI)の場合、特定業種についてはベトナム側投資比率や投資法に基づく特別条件が求められることがあります。詳細については、KMCまでお問い合わせください。
法定代表者
法定代表者は、出資者(構成員)である必要はありませんが、18歳以上で、完全な民事行為能力を有する者でなければなりません。
法定代表者はベトナム人または外国人であることが可能であり、外国投資企業(FDI)においても問題ありません。
また、公務員・官吏は、有限責任会社の出資者や構成員となることはできませんが、会社の持分を譲渡により取得することは可能です。
準備書類
外国投資企業(FDI)が有限責任会社(TNHH)を設立する際には、ベトナムの法令(特に2025年企業法および68/2025/TT-BTC通達)に従うための特別な要件があります。以下に詳細な書類一覧を示します。
企業登録申請書
2025年財務省通達第68/2025/TT-BTC号によれば、企業登録申請書は、一⼈有限責任会社の場合は様式 I-2、二人以上の有限責任会社の場合は様式 I-3 を使用するものとされています。
当該申請書には、会社名、本店所在地、事業内容、出資資本金 などの基本的事項を記載する必要があります。
会社定款
会社の組織構造、構成員の権利義務等を詳細に規定した書類であり、全ての設立時構成員によって承認されるものです。
構成員名簿
構成員名簿は、二人以上の有限責任会社にのみ適用されます。出資構成員の情報を一覧にするため、様式 I-6 を使用します。
実質的支配者の申告書(2025年7月1日より義務化)
実質的支配者に関する申告書については、様式 II-10 および様式 I-11 を用いて申告することができます。記載内容には、氏名、国籍、持分所有割合、支配権の状況等が含まれます。なお、当該書類には、法定代理人の署名による確認が必要です。
法的書類の認証写し
個人が出資する場合は、住民番号カードまたはパスポートの認証写しのみで足りますが、法人が出資する場合は、以下の書類が必要となります:
- 企業登録証明書またはこれに相当する文書の認証写し
- 代表者選任決定書および代表者の法的書類の認証写し
※ 外国法人の場合、これらの書類は領事認証が必要です。
法定代理人の書類:住民番号カードまたはパスポートの認証写し
投資登録証明書
これは、投資法の規定に基づき、FDI 企業に対して必須とされています。
委任状(該当する場合)
申請者が法定代理人でない場合、委任状および受任者の法的書類の認証写しを提出する必要があります。
関連手数料
企業登録申請の提出手数料は免除されますが、以下の必須費用の支払いが必要です:
100,000 VND(国家企業登録情報システムにおける設立公告手数料)
450,000 VND(会社印の作成及び印影公示手数料)
200,000 VND(申請提出の委任手数料(委任サービスを利用する場合))
正確な申請書類を準備するためのポイント
申請前には、各書類が適切に公証されているか、記載内容が相互に一致しているかを十分に確認する必要があります。
海外で発行された書類については、提出前に領事認証(アポスティーユ該当外の場合)を行う必要があります。
FDI 企業の場合、申請書類は一般的に複雑になるため、KMC のような専門コンサルティングサービスを活用し、書類準備や確認を支援してもらうことで、誤りを回避し、手続の時間を短縮することができます。
有限責任会社(LLC)の設立手続および所要期間
ステップ 1:申請書類の提出

書類をすべて準備した後、会社の本店所在地を管轄する省・市の計画投資局(DPI)にある企業登録課へ企業登録申請書を提出します。提出方法は以下の3通りから選択できます:
書面提出
担当部署と直接やり取りを希望する場合、紙の申請書類を DPI に直接持参して提出します。
郵送による提出
移動の手間を省きたい場合、申請書類を郵便サービスで DPI に送付することができます。
オンライン提出
国家企業登録情報システムを利用し、事業登録アカウントまたはデジタル署名を用いて電子申請を行うことも可能です。オンラインで提出された電子書類は紙面と同等の効力を有するため、安心して利用できます。
※ 多くの地域ではオンライン申請が 100% 必須となっている場合があります。申請地の最新規定を事前に確認し、適切な方法を選択することが重要です。
ステップ 2:登録結果の受領

申請後、DPI は 3営業日以内 に申請内容の適法性を審査します。
書類が適法と判断された場合
企業設立の正式な証明となる「企業登録証明書」が発行されます。書類が不備または不適法と判断された場合
修正・補正が必要な内容を明確に示した文書による通知が行われます。記載内容に従って修正した上で再提出します。
オンライン申請の場合、書類が承認された後、原本書類を持参し、企業登録課のワンストップサービス窓口にて手数料を支払い、正式な結果を受領します。
許可証受領後に行う必須手続
会社設立公告の実施
2020年企業法第32条に基づき、企業登録証明書を受領した後は、受領日から30日以内に国家企業登録情報システム上で会社設立情報を公示する必要があります。遅延した場合は行政罰の対象となる可能性があります。
公告には オンライン方式 と 窓口方式 の2種類があります。
オンライン方式:国家企業登録情報システムにアクセスし、必要事項を入力のうえ、公告手数料を納付します。
窓口方式:会社本店所在地を管轄する計画投資局(DPI)の企業登録課に書類を直接提出します。
公告確認の領収書は、必要に応じて証拠として保管することを推奨します。
税務初期申告書の提出
税務申告書の提出により、税務当局は会社の会計形態や使用する請求書の種類を把握できます。そのため、設立直後から適正に税務義務を履行するために重要なステップです。
提出に必要な書類
事業税(営業税)申告書(優先的に準備、必須税目です)
会計形態および請求書の種類登録書(例:電子請求書)
代表取締役および会計責任者の任命決定書
固定資産減価償却の方法(該当する場合)
税務当局との情報交換登録票
すべての書類を準備後、会社本店所在地を管轄する税務署に提出します。
企業銀行口座の開設

銀行口座は、取引先との決済、資金管理の透明化、支出管理に不可欠です。そのため、会社運営に欠かせないステップとなります。
手続としては、ベトナム国内の信頼できる商業銀行を選び、銀行が要求する書類を準備して口座を開設します。なお、以前のように税務当局へ銀行口座を通知する必要はなく、時間を節約できます。
デジタル署名(トークン)の取得
デジタル署名は、電子税務申告、社会保険料の提出、電子請求書の署名など、オンライン取引に必須のツールです。これにより、税務署や社会保険事務所に直接出向く必要がなく、特に多忙なFDI企業に適しています。
取得方法は、信頼できるデジタル署名提供業者に連絡し、登録のうえトークンを受領することです。
看板の設置
本店、支店、および代表事務所には会社の看板を掲示する必要があります。看板には、会社名および税務番号を明示することが法律で義務付けられています。遵守しない場合、最大で 10〜15 百万ドンの行政罰が科される可能性があります。
会社印の作成
会社印は契約書、証憑、請求書への押印に使用され、法的効力を担保します。国家機関への印影登録は不要ですが、印章には会社名および税務番号が正確に記載されていることが求められます。
電子インボイスの発行
2022年7月1日以降、すべての企業は電子インボイスを使用することが義務付けられています。電子インボイスは紙のインボイスに代わるもので、コスト削減や管理効率の向上に寄与します。さらに、保管が容易で高い機密性を有し、取引管理をより専門的に行うことが可能です。
従業員の社会保険登録
雇用契約締結後 30日以内 に従業員の社会保険への加入手続きを行う必要があります。これは法的義務であるだけでなく、企業が専門的な労働環境を整備し、優秀な人材を引き付けるためにも重要です。登録にあたっては、以下の書類を準備します:
社会保険加入申告書
加入対象従業員名簿
従業員の雇用契約書
これらを管轄の社会保険機関に提出します。
副許可証・資格証明書の取得および出資の履行
教育、医療などの業種では、副許可証や職業資格証明書が必要な場合があり、遅滞なく取得することで監査時の罰則を回避できます。
出資義務は規定期間内(通常は許可証受領後 90日以内)に履行する必要があります。資金面で困難がある場合は、計画投資局(DPI)で資本金減額手続きを行うことが可能です。
有限責任会社(LLC)の設立は、単に営業許可証を取得するだけでなく、上記の諸手続きを完了することまで含まれます。FDI 企業にとっては、国内法と親会社規定の違いにより手続が複雑になる場合があります。そのため、必要に応じて KMCの専門コンサルティングサービス(ホットライン +84 814 894 789(ハノイ))に相談することを推奨します。当社は多くの FDI 企業に対し、最適な解決策を提供してきた実績があります。