多くの管理者、人事担当者、及び事業主は、営業職社員の給与・賞与規程を策定する際、経験や専門知識の不足により困難を感じています。そのため、本稿では、KMCが魅力的で、公平かつベトナム法令を遵守し、かつ親会社の要件にも適合する給与・賞与規程を構築する方法について詳しくご案内します。

給与・賞与規程とは何か

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給与・賞与規程とは、企業が社員、特に常に目標達成に向けて奔走する営業職社員に対する給与、賞与、手当およびその他の福利厚生の支給・管理に関する社内規定を定めたものです。
これは、会社と従業員との間における明確な契約書のような役割を果たし、すべての処遇を透明かつ公正にし、労働法(2019年労働法および政令第145/2020/NĐ-CP号)に則って運用されるようにするための仕組みです。

給与・賞与規程は、単に給与を期限内に支払うための手段ではなく、社員のモチベーションを高める重要な鍵でもあります。
従業員が「自分がいくらの給与を、どのような基準(売上、目標達成度、特別な貢献など)で受け取るのか」を明確に理解できれば、より安心して業務に取り組み、生産性の向上につながります。

営業職社員の給与・賞与規程における基本構成要素

営業職社員の給与・賞与規程は、公平性を確保しつつ、社員の潜在能力を最大限に発揮させる動機付けの仕組みでなければなりません。
そのため、完全な規程を構築するためには、以下の主要な構成要素が必要です。

基本給(固定給)

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基本給(固定給)とは、営業職社員が業績の結果にかかわらず毎月受け取る固定的な所得を指します。これはいわば「経済的な屋根」のようなものであり、従業員の生活を安定させるとともに、社会保険の拠出など法令上の義務(2019年労働法および通達第96/2015/TT-BTC号第4条)を遵守するための基礎となります。基本給の水準は、業界の賃金水準や通常の労働条件を基準として設定することが望まれます。

手当

手当は、業務上発生する費用負担を軽減するために支給される補助的な金銭給付です。
例えば、昼食手当、交通費手当(ガソリン・車両)、電話手当、またはチームリーダーに対する責任手当などが考えられます。
これらの手当は、企業が従業員に対して配慮していることを示すだけでなく、営業活動への集中度を高める効果もあります。

賞与

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賞与は、営業職社員が目標を上回る成果を達成するための動機付けとして機能します。
通達第96/2015/TT-BTC号第4条に基づき、賞与に関する取り扱いは透明かつ明確に定める必要があります。
そのうえで、以下のような賞与区分を規程に明示することが適切です。

  • 目標達成または超過時の売上賞与
  • 年末賞与
  • 個人業績賞与
  • 優れたアイデアや創造的提案に対する特別賞与

これにより、社員の努力が正当に評価され、士気の向上につながります。

福利厚生制度

福利厚生は、優秀な人材を長期的に定着させるための経営戦略的要素です。
内容としては、有給休暇、社会保険加入、病気・慶弔・労働災害時の支援、その他会社独自の特別制度などが挙げられます。
これらの制度は、従業員の安心感と忠誠心を高め、企業の持続的な発展を支える基盤となります。

一般的な給与・賞与構造モデルとその選択方法

ベトナムの実務および法令(2019年労働法第93条など)に基づき、以下に代表的な給与体系モデルと、それぞれの特徴および自社に最適なモデルを選定する際の参考指針を示します。

時間給モデル

最も伝統的な給与体系であり、実際の出勤日数または労働時間に基づいて支給される方式です。
基本給に各種手当(勤続手当、交通費手当など)を加え、安定的な収入を確保します。

例:
営業職社員の基本給が月額600万ドン、手当が150万ドンの場合、満勤であれば総支給額は750万ドンとなります。

  • 利点: 安定性を重視する業務や、売上プレッシャーの少ない職務に適する。
  • 欠点: 高い能力を持つ社員にとっては、インセンティブが乏しく、努力を促しにくい。
  • 適用に適した企業: 小規模企業や、販売サポート担当(直接契約を締結しない職務)。

出来高給モデル

販売した製品の数量に基づいて給与を算定するモデルです。
単価があらかじめ設定され、その数量に応じて報酬が決定されます。

例:
社員が製品Aを40個(単価3万ドン)、製品Bを50個(単価4万ドン)販売した場合、月収は合計320万ドンとなります。

  • 利点: 成果に応じた公正な報酬であり、社員の生産意欲を高める。
  • 欠点: 数量重視になりやすく、品質低下を招くおそれがある。
  • 適用に適した業種: 小売業、日用消費財など、取引が単純な業種。

売上歩合モデル 

基本給と販売手数料(コミッション)を組み合わせる方式です。
収入が営業成果に比例するため、営業活動の動機付けに効果的です。

例:
基本給500万ドン、売上5,000万ドンに対して5%の歩合を設定した場合、総収入は750万ドンとなります。

  • 利点: 収入が成果に直結し、営業契約(deal)を積極的に獲得する動機となる。
  • 欠点: 収入が不安定になりやすく、売上変動によるプレッシャーが大きい。

適用に適した業種: 不動産、保険など高額取引を伴う業種。

KPI連動型モデル(2P・3Pモデル)

近年普及している成果・能力・職務責任を組み合わせた近代的給与モデルです。

  • P1: 職位(Position)
  • P2: 能力(Person)
  • P3: 成果(Performance)

**2Pモデル(P1+P3)**では、例えば固定給600万ドン、KPI達成率50%に応じた成果給300万ドンで合計900万ドンとなります。
**3Pモデル(P1+P2+P3)**では、さらにスキルや専門性に基づく加算報酬を含みます。

  • 利点: 公平性と透明性が高く、スキル向上および成果向上を促進する。
  • 欠点: 管理者による主観を排除するため、評価制度の明確化が不可欠。

適用に適した企業: 大企業、複数の評価指標(売上・契約率・顧客満足度等)を導入している企業。

請負型モデル

完了した業務量や成果に応じて、あらかじめ定められた単価で支給する方式です。

例:
目標売上1億ドン、契約1件あたりの請負単価100万ドンとした場合、100件契約を達成すれば収入は1億ドンとなります。

  • 利点: 作業量に応じた公正な報酬が得られ、生産性向上につながる。
  • 欠点: 業務量管理が難しく、創造的業務には適さない。

適用に適した業種: 建設業、運輸業、またはプロジェクト単位で業務が発生する営業分野。

ケーススタディ:業種別にみるコミッション制度の導入事例

各業種には固有の特性があり、それに応じてコミッション制度(歩合給制度)を柔軟に設計することで、営業チームのモチベーション向上と企業利益の最適化を同時に実現することができます。
以下では、代表的な業種ごとの実践例と導入のヒントを紹介します。

日用消費財(FMCG)業界

この業界の特徴は、商品の回転率が高く、取引件数が多いこと、またスーパーマーケットやコンビニエンスストアなど流通チャネル拡大が中心課題である点にあります。

導入提案:

  • 売上高に基づく歩合給方式を採用し、月間総売上額に対して一定割合のコミッションを支給。
  • 大手代理店との契約を獲得した場合は追加で100万ドンを支給。
  • 交通費手当(50万ドン/月)および通信手当(30万ドン/月)を付与し、営業活動を支援。

例:
売上1億ドンの場合:固定給500万 + コミッション4%(400万) + 手当80万 = 合計980万ドン

補足:
新規顧客獲得数をKPIに組み込むことで、市場開拓の意欲を高めることができます。

不動産業界

この業界は取引単価が高く、販売サイクルが長く、顧客対応が重要な分野です。

導入提案:               

  • 段階別(スライド式)コミッション制度を導入。
    • 5億ドン未満:1%
    • 5~10億ドン:2%
    • 10億ドン超:3%
  • 支払は2回に分け、契約締結時50%、残り50%は代金回収後に支給。
  • 契約締結から30日以内に成約した場合は追加で1,000万ドンを支給。

:
契約金額8億ドン → コミッション2% = 1億6,000万ドン(契約時8,000万 + 完了時8,000万)

ソフトウェア(SaaS)業界

SaaS(Software as a Service)は無形商品を定期契約で販売し、顧客維持が重要なビジネスモデルです。

導入提案:

  • 年間契約価値(ACV)に基づくコミッション制度を採用。
    • 新規契約:10%
    • 更新契約:5%
  • 支払いは、契約締結時50%、入金確認後50%。
  • 大企業との契約を成立させた場合は、追加インセンティブ5,000,000ドンを支給。

例:
契約金額1億ドン → コミッション10% = 1,000万ドン(契約時500万 + 入金時500万)

保険業界

保険は複雑な金融商品であり、信頼関係が重視され、解約リスクが存在する業界です。

導入提案:

  • 初年度保険料に対し15%、更新年度に対し5%のコミッションを設定。
  • 顧客が2年以上継続した場合、追加インセンティブを支給。

例:
初年度保険料5,000万ドン → コミッション15% = 750万ドン
2年目継続保険料5,000万ドン → コミッション5% = 250万ドン + 継続ボーナス100万ドン(= 総額1,100万ドン)

補足:
解約率を抑制するため、営業担当者に対して販売スキルおよび顧客フォロー研修を実施することが推奨されます。

営業職社員の給与・賞与制度は、単純な計算式で決められるものではなく、業界特性を十分に理解したうえで戦略的に設計すべき経営課題です。
もし、自社に最適な給与・報酬体系の設計について専門的な支援が必要な場合は、
KMC(ハノイ)国際人事・給与コンサルティングサービス(ホットライン:+84 814894789)までご相談ください。
約25年の実務経験を有する専門家チームが、法令遵守を前提に、御社の営業職向け給与・賞与規程構築を全面的にサポートいたします。