企業が自分の残業代を正しく計算していないのではと感じていても、法律や正確な計算式がわからず困っていませんか?
本記事では、KMCが残業の状況ごとに適用できる4つの計算式を提供し、自分で確認できるようにサポートします。
2025年版:正規の残業代計算式(最新版)
残業代を正しく計算することは、企業が法令を遵守するだけでなく、労働者の権利を保障するためにも重要です。
以下は、2025年に適用される、政令第145/2020/NĐ-CPおよび2019年労働法第98条に基づく残業代の計算式です。
時間給制に基づく残業代の計算方法
基本式:
残業代 = 実際の時間給 × 割増率(150%、200%、または300%)× 残業時間数
内訳:
- 実際の時間給=月給 ÷ 月の総労働時間数
※手当・補助・賞与・残業代は含まない。月の労働時間は通常「26日 × 8時間 = 208時間」を基準とするが、企業の就業規則により異なる場合があります。 - 割増率:
- 平日残業:最低150%
- 週休日の労働:最低200%
- 祝日・テト(旧正月)勤務:最低300%(祝日分の給与とは別途) - 残業時間数: 所定労働時間外の実際に働いた時間数
例:
ホアンさんの月給は7,800,000 VND。月の労働時間は208時間(26日 × 8時間)とすると、
実際の時間給 = 7,800,000 ÷ 208 ≒ 37,500 VND/時間
平日に4時間の残業を行った場合、
残業代 = 37,500 × 150% × 4時間 = 225,000 VND
出来高給制に基づく残業代の計算方法
基本式:
残業代 = 製品単価 × 割増率(150%、200%、または300%)× 残業で完成させた製品数
内訳:
- 製品単価: 通常の労働日における、1製品あたりの報酬額
- 割増率:
- 平日残業:最低150%
- 週休日の労働:最低200%
- 祝日・テト(旧正月)勤務:最低300%(祝日分の給与とは別途) - 残業製品数: 所定労働時間外に完成させた製品の数量
例:
ランさんは1製品につき10,000 VNDの単価で作業をしており、週休日に20製品を追加で作った場合、
残業代 = 10,000 × 200% × 20 = 400,000 VND
夜間残業(時間給制)の計算方法
基本式:
夜間残業代 =(実際の時間給 × 割増率(150%、200%、または300%))
+(実際の時間給 × 30%)
+(昼間時間給 × 20%)× 夜間残業時間数
内訳:
- 実際の時間給: 月給(手当、補助金、賞与、残業代を除く)÷ 月間総労働時間(通常は26日 × 8時間=208時間。企業の規定による)
- 割増率:
- 平日残業:150%
- 週休日勤務:200%
- 祝日・テト勤務:300% - 30%: 夜間勤務手当
- 20% × 昼間時間給: 夜間残業手当の加算分
- 昼間時間給は以下によって変動:
- 通常勤務:100%
- 平日の時間外勤務:150%
- 週休日勤務:200%
- 祝日・テト勤務:300% - 夜間残業時間数: 22時〜翌6時の間に発生した残業時間
例:
ホアンさんが平日に夜間6時間の残業を行い、実際の時間給が37,500 VNDの場合、
夜間残業代 =(37,500 × 150%)+(37,500 × 30%)+(37,500 × 150% × 20%)× 6
= 472,500 VND
夜間残業(出来高給制)の計算方法
計算式:
夜間残業代 =(製品単価 × 割増率(150%、200%、または300%))
+(製品単価 × 30%)
+(昼間製品単価 × 20%)× 夜間残業製品数
内訳:
- 製品単価: 通常の勤務日における1製品あたりの報酬単価
- 割増率:
- 平日残業:150%
- 週休日勤務:200%
- 祝日・テト勤務:300% - 30%: 夜間勤務手当
- 昼間製品単価 × 20%: 夜間残業加算手当
- 昼間単価は勤務日に応じて以下のように変動:
- 通常勤務:100%
- 平日の時間外勤務:150%
- 週休日勤務:200%
- 祝日・テト勤務:300% - 夜間残業製品数: 22時~翌6時の間に完成した製品数
例:
ランさんが平日に夜間10製品を仕上げ、製品単価が10,000 VNDの場合、
夜間残業代 =(10,000 × 150%)+(10,000 × 30%)+(10,000 × 150% × 20%)× 10
= 210,000 VND
重要な注意点:
企業は、月間の基準労働日数(通常は月26日)を社内規定に基づいて明確に定めておく必要があります。たとえば2月のような短い月でも、管理当局から別途指示がない限り、通常通り26日とします。
時間外労働賃金の計算におけるよくある誤りとその対処法
法定時間外の労働を超過するケース
誤り:
一部の企業では、労働者に対し、労働法で定められた時間外労働の上限を超えて残業を求める場合があります。
対処法:
2019年労働法第107条に基づき、企業は以下の点を遵守する必要があります:
● 総労働時間(時間外労働を含む)が1日12時間を超えないこと。
● 時間外労働の総時間は、1か月あたり40時間、年間では200時間以内に制限すること(繊維・縫製、皮革、電子機器などの特定業種や緊急事態に限り、年間300時間まで可能)。
個人所得税(PIT)の誤った計算
誤り:
一部の企業では、時間外労働による賃金全額を個人所得税(PIT)の課税対象として計算してしまうケースがあります。しかし、時間外労働によって支払われる賃金のうち、通常労働時間を上回る部分は、法律上非課税とされています。
対処法:
財務省通達第111/2013/TT-BTC号により、通常の労働時間に比べて高い時間外賃金部分はPITの課税対象外です。したがって、企業は時間外労働のうち、通常賃金に相当する部分と、上乗せ部分を明確に区分する必要があります。これにより、労働者は通常賃金相当分のみ課税対象となります。
例:
通常の時給が50,000VND、時間外労働時の時給が80,000VNDである場合、差額である30,000VNDはPITの課税対象外となります。
賃金計算のプロセスが不明瞭
誤り:
一部の企業では、時間外労働の賃金計算方法を公開しておらず、また労働者に対する説明も不十分なため、誤解や労使間の紛争が発生する可能性があります。
対処法:
企業は、社内規則や労働契約書に時間外労働賃金の計算方法を明確に定め、公表することが求められます。さらに、通常労働時間の賃金、時間外労働の賃金、控除項目(該当する場合)を明記した給与明細を労働者に提供することで、透明性を高めることができます。また、定期的に労働者との対話の場を設け、疑問点の解消や最新制度の共有を行うことも重要です。
当社では、時間給制、出来高制、深夜勤務など、各ケースに対応した時間外賃金の計算式をご紹介しております。しかし、企業ごとに各種手当の取り扱いやシフト勤務制度など複雑な事情が存在することもあります。KMCでは、ベトナムにおける17年以上のFDI企業向け支援実績を活かし、法令に準拠した給与制度構築をサポートいたします。